アイスピックのようなもの

読んだ本の感想なり、なんなりを書いてゆく

「闇の左手」

 Light is the left hand of darkness

and darkness the right hand of light.

Two are one, life and death, lying

together like lovers in kemmer,

like hands joined together,

like the end and the way.

 

アーシュラ・K・ル=グウィンは日本ではスタジオ・ジブリが映画化した「ゲド戦記」でおなじみですね。そうしたファンタジーだけでなくSF小説も沢山書いていて、有名な作品の一つが「闇の左手」でハヤカワ文庫から小尾芙佐訳ででています。両性具有の人類が登場することからフェミニズム的な観点からも高く評価されているようです。

 

本作のテーマは一言で言うと共存です。主人公はエクーメン(Ekumen)という宇宙連合から「冬(Winter)」という星に派遣された使者で、異なる星々の間に友好関係を結ぶ任務を遂行していきます。また、その星の住人たちは両性具有者であり、年がら年中発情期の人間とは違って、ケンマー期(kemmer)を除けばそうした欲望に突き動かされることはありません。こうした男女や異世界の間にある二項対立がどのように調停されるのか、共存できるのかが物語の大きな問題となって主人公に立ちはだかってゆくのです。

 

引用した文章は「冬」の星に伝わる詩、題名の元になっているものです。意味としては次のようになります。(私訳)

 ”光は闇の左手

 そして闇は光の右手。

 二つは一つなり、生と死は、共に横たわり、

 さながらケンマー期の恋人であり、

 互いに握りあった手であり、

 行く先と行く路のようである。”

私たちは結局のところ二項対立的にしか物事を理解できないのですが、こうした一元的な世界が存在し、またそのように思考できる回路を(再)発見させてくれるのがSFの面白さであり、この作品の良さなのだと思いました。

とりあえず